• DX・業務効率化

製造業のDXの進め方|中小製造業が最初にシステム化すべき業務の優先順位と3ステップ・失敗パターン・事例をわかりやすく解説

製造業のDXの進め方|中小製造業が最初にシステム化すべき業務の優先順位と3ステップ・失敗パターン・事例をわかりやすく解説

「製造業もDXを」と言われても、受注はFAX、在庫はExcel、生産計画は工場長の頭の中、という中小製造業は少なくありません。何から手をつければよいのか、どの業務をシステム化すれば効果が出るのかがわからず、検討が止まっているケースもよく見かけます。

この記事では、中小製造業の経営者・管理部門の方に向けて、製造業のDXの意味と段階、よくある課題、最初にシステム化すべき業務の優先順位、失敗しない進め方を整理します。経済産業省の「ものづくり白書」やIPA(情報処理推進機構)の調査など、公的なデータもあわせて紹介します。

この記事の結論
  • 製造業のDXは、紙・Excelのデジタル化 → 個別業務のシステム化 → データをつないだ全体最適の順に進めるのが現実的です。
  • 最初のシステム化は、受注・在庫など「数字が合わない」「探す時間が長い」業務から選ぶと効果が見えやすくなります。
  • 進め方の基本は、現状の見える化 → 小さく始める → データ連携の3段階です。最初から全社一括の大規模導入は避けます。
  • ものづくり白書2026では、データを取得している事業者は7割弱でも、効果が得られた事業者は約4割にとどまります。取ったデータを使う仕組みまで設計することが大切です。
目次
  1. 製造業のDXとは
  2. 中小製造業がDXでつまずく課題
  3. 最初にシステム化すべき業務の優先順位
  4. 製造業DXの進め方(3ステップ)
  5. 製造業DXのよくある失敗パターン
  6. 当社が関わった製造業の事例と、使える補助金
  7. よくある質問
  8. まとめ

製造業のDXとは

製造業のDXとは、デジタル技術とデータを使って、受注から生産・出荷・原価までの業務のやり方を変え、品質・納期・収益力を高める取り組みです。生産設備にセンサーを付けることだけがDXではありません。中小製造業では、まず事務所と現場の「情報の流れ」をデジタルにすることが出発点になります。

経済産業省の「DXレポート2」では、DXに至る取り組みを次の3段階で整理しています。

DXの3つの段階と製造業での例

段階意味製造業での例
デジタイゼーションアナログ・紙の情報をデジタルデータにする紙の作業日報をタブレット入力にする。FAXの注文書をデータ化する
デジタライゼーション個別の業務やプロセスをデジタル化する受注管理・在庫管理・工程管理をそれぞれシステム化する
デジタルトランスフォーメーション業務全体をデータでつなぎ、ビジネスのやり方を変える受注から生産計画・調達・原価までを連携し、短納期対応や適正な見積もりを実現する
出典:経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」(2020年12月)の整理をもとに、製造業の例を当社で追記。

いきなり3段階目を目指す必要はありません。紙やExcelのデータ化と、個別業務のシステム化を積み重ねた先に、全体をつなぐDXがあります。

中小製造業がDXでつまずく課題

中小製造業の現場では、次のような課題が重なっていることが多くあります。

  • Excelと紙が分散している:受注表、在庫表、生産計画表が別々のExcelで管理され、同じ情報を何度も転記している
  • 属人化している:生産計画や段取りの判断が特定の担当者に頼っており、その人が休むと回らない
  • 多品種少量・短納期:品目や仕様の種類が多く、パッケージの標準機能では自社の管理方法に合わないことがある
  • 人手不足:現場も事務も人が足りず、システム化を検討する時間そのものが取れない
  • データはあるが使えていない:記録は残っているが形式がバラバラで、集計や分析に使えない

公的な調査でも、こうした状況が裏付けられています。2026年版ものづくり白書によると、中小企業の製造業の従業員数過不足DIは2025年でマイナス17.9と、人手が足りない状態が続いています。また、能力開発の問題点として「指導する人材が不足している」を挙げた事業所は62.8%でした。人に頼った管理を続けるほど、技能継承や業務の引き継ぎが難しくなります。

データの活用についても、同じ白書では、製造に関するデータを取得している事業者は7割弱ある一方、効果が得られた事業者は約4割にとどまり、企業間のデータ連携は2年前からほぼ変化がないとされています。IPAの「DX動向2025」でも、DXに取り組む従業員100人以下の日本企業のうち、成果が出ていると答えたのは58.1%で、米国(91.2%)との差が大きいと報告されています。

最初にシステム化すべき業務の優先順位

製造業の業務は、受注から出荷・請求まで一続きになっています。どこから始めるかは会社ごとに違いますが、一般的には「後工程のデータの元になる業務」から始めると、あとでつなげやすくなります。

システム化の優先順位の目安

順位業務システム化で変わること着手を急ぐべきサイン
1受注管理注文内容・納期・仕様を1か所で管理し、生産・出荷の起点にできるFAX・メールの注文を手で転記している。納期回答に時間がかかる
2在庫管理原材料・仕掛品・製品の数量をリアルタイムに把握できる帳簿と実在庫が合わない。欠品や過剰在庫がよく起きる
3生産計画受注と在庫をもとに計画を立て、変更にも対応しやすくなる計画が特定の人の頭の中にしかない
4工程管理(進捗)どの製品がどの工程まで進んでいるかを見える化できる進捗確認のために現場へ何度も聞きに行っている
5品質・トレーサビリティロット単位で材料・工程・出荷先を追跡できる不良発生時に影響範囲の特定に何日もかかる。取引先から追跡を求められている
6原価管理製品ごとの実際原価を把握し、見積もりや価格交渉に使えるどの製品で利益が出ているのかわからない
順位は一般的な目安です。取引先からトレーサビリティを求められている場合など、事情によって順番は入れ替わります。

大切なのは、すべてを一度に作らないことです。たとえば受注と在庫を先にシステム化しておけば、そのデータを生産計画や原価管理に使えます。逆に、原価管理だけを先に作っても、元になる受注・作業時間・材料のデータがExcelのままでは、集計の手間が残ってしまいます。

品質やトレーサビリティについては、取引先の要求や規制への対応が絡むため、別の記事で詳しく解説しています。

製造業DXの進め方(3ステップ)

中小製造業のDXは、次の3ステップで進めると失敗が少なくなります。

  1. 現状の見える化受注から出荷までの業務の流れを図にし、どこで紙・Excel・転記が発生しているか、誰が何に時間を使っているかを書き出します。業務フロー図を作るだけでも、ムダや属人化の場所がはっきりします
  2. 小さく始める効果が大きく、範囲を絞れる業務を1つ選んでシステム化します。最初は1工場・1ラインなど対象を限定し、現場の声を聞きながら改善します。小規模なシステムなら、費用は100万〜300万円・期間は1〜3か月程度が目安です
  3. データを連携する受注・在庫・生産・原価のデータを、二重入力なしでつなぎます。既存の販売管理や会計ソフトとはCSVやAPIで連携し、徐々に全体最適へ広げます

ステップ1では、現場の担当者にも参加してもらうことが重要です。事務所だけで考えたシステムは、現場で入力されずに使われなくなりがちです。入力の手間を減らすために、バーコードやタブレット、ハンディ端末の利用も検討します。

ステップ2で対象業務を選ぶときは、「効果を数字で確認できるか」を基準にします。たとえば、転記にかかる時間、在庫の差異、納期回答までの時間などです。導入前に測っておけば、導入後に効果を比べられ、次の投資判断にも使えます。

製造業DXのよくある失敗パターン

ツール導入が目的になるIoTやAIを入れること自体が目的になり、何の課題を解決するのかが決まっていない。結果として、データを集めても使い道がない
全部を一度に入れ替える全社の基幹システムを一気に刷新しようとして、要件がまとまらず、費用と期間が膨らむ。現場の混乱も大きくなる
現場が入力しない入力項目が多すぎる、操作が難しいなどの理由で現場が使わず、結局Excelと紙に戻ってしまう

このほか、「パッケージに業務を合わせきれず、カスタマイズが膨らむ」「担当者が1人で抱え込み、異動や退職で止まる」といった失敗もよくあります。パッケージを選ぶ場合も、自社で開発する場合も、自社の業務のどこが標準的で、どこが強みなのかを先に整理しておくことが大切です。

「データを取る」だけでは効果は出ません設備の稼働データや作業実績を取るだけでは、業務は変わりません。誰が、どの画面で、どのタイミングでそのデータを見て、何を判断するのかまで決めてから仕組みを作ります。ものづくり白書でも、データを取得している事業者に比べて、効果を得た事業者は少ないと指摘されています。

当社が関わった製造業の事例と、使える補助金

製造業のシステム化について、当社では次のような事例を公開しています。業務の進め方の参考にしてください。

システム化の費用には、国や自治体の補助金・助成金を使える場合があります。対象となる経費や申請時期、要件は年度ごとに変わるため、必ず最新の公募要領で確認してください。契約や発注のタイミングに制約がある制度も多いため、開発会社に発注する前に確認しておきます。会計処理や税務の扱いについては、税理士などの専門家に確認しましょう。

システム化の予算感を先に知りたい方へ
作りたい機能や規模を選ぶだけで、開発費用の目安がわかる開発費用の概算シミュレーターを用意しています。補助金の申請や社内稟議の前の予算づくりにご活用ください。
オーバーエックスの製造業向けシステム開発オーバーエックスでは、受注・在庫・生産・工程・トレーサビリティ・原価など、製造業の業務システムの受託開発に対応しています。Excelや紙で回している業務の整理から、小さく始めるシステム化、既存システムとのデータ連携までご相談いただけます。製造業向けの取り組みは製造業のページをご覧のうえ、お問い合わせください。

よくある質問

中小製造業のDXは何から始めればよいですか?
まずは受注から出荷までの業務の流れを書き出し、紙・Excel・転記が多い場所を見つけることから始めます。そのうえで、受注管理や在庫管理など、効果を数字で確認しやすい業務を1つ選んで小さくシステム化するのが現実的です。
生産管理パッケージを入れればDXになりますか?
パッケージの導入はデジタル化の手段の1つですが、それだけでDXになるわけではありません。多品種少量や独自の工程管理など、自社の業務に合わない部分が多いとカスタマイズ費用がかさみます。自社の業務のどこが標準的かを整理したうえで、パッケージと自社開発を比較しましょう。
IoTやAIは導入すべきですか?
解決したい課題がはっきりしていれば有効です。ただし、受注や在庫などの基本データが紙やExcelに分散したままだと、集めたデータを活かしきれません。まずは基本業務のデータを整え、そのうえで設備データの活用を検討する順番をおすすめします。
システム化の費用はどのくらいかかりますか?
業務の範囲と規模によって大きく変わります。目安として、小規模なシステムで100万〜300万円・1〜3か月、中規模で300万〜1,000万円・3〜6か月程度です。補助金を使える場合もあるため、早めに対象と申請時期を確認しておきましょう。
IT担当者がいなくても進められますか?
進められます。ただし、業務をよく知る社内の担当者を1人決め、開発会社と一緒に要件を整理する体制は必要です。開発を丸投げにせず、現場の意見を集める役割を社内で持つことが成功のポイントです。

まとめ

製造業のDXは、紙・Excelのデジタル化から始め、個別業務のシステム化を積み重ね、最後にデータをつないで全体を最適化する流れで進めます。中小製造業では、受注・在庫などデータの起点になる業務から小さく始め、効果を確認しながら生産計画・トレーサビリティ・原価へと広げるのが現実的です。ツールを入れることを目的にせず、「誰がどのデータで何を判断するか」を決めてから仕組みを作りましょう。

参考:経済産業省・厚生労働省・文部科学省「2026年版ものづくり白書」(2026年5月)、経済産業省「DXレポート2(中間取りまとめ)」(2020年12月28日)、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX動向2025」(2025年6月)および DX SQUARE「中堅・中小企業視点から見た『DX動向2025』ポイント解説」。

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TechBase 編集部(株式会社オーバーエックス)

東京・秋葉原のシステム開発会社。業務システム・Webシステム・基幹システムの受託開発、システムリプレイス、自社パッケージ開発、要件定義の支援を手がけています。オーバーエックスの特徴を見る

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