• AI・最新技術

商社・卸のAI活用|FAX・PDF注文書の受注入力と見積作成の自動化、商品マスタ照合とEDIとの使い分け

商社・卸のAI活用|FAX・PDF注文書の受注入力と見積作成の自動化、商品マスタ照合とEDIとの使い分け

「取引先の多くがいまだにFAXで注文してくる」「PDFの注文書を見ながら、基幹システムに1件ずつ打ち込んでいる」。商社や卸売業では、受注入力が毎日の大きな負担になっています。入力ミスが誤出荷につながるため、ダブルチェックにも人手がかかります。取引先に「EDIに切り替えてほしい」とお願いしても、すぐには進まないのが実情です。

この記事では、FAX・PDFの注文書の受注入力と、見積作成について、AIでどこまで自動化できるかを整理します。読み取りの精度より大切な「商品マスタとの照合」の考え方、AIを入れる前に検討したいこと、自社で進められる範囲と専門の会社に頼んだほうがよい範囲も説明します。

この記事の結論
  • FAX・PDFの注文書は、AIで得意先・品名・数量・納期などを読み取り、受注データの下書きを作るところまで自動化できます。確定は人が確認して行います。
  • 効果を左右するのは読み取りの精度より、得意先ごとの品名や品番の書き方を、自社の商品マスタに結びつける仕組みです。
  • 見積作成は、問い合わせ内容から品目を拾い、単価表や過去の見積をもとに下書きを作る使い方が現実的です。価格の判断と承認は人が行います。
  • AIの前に、取引量の多い取引先からEDIやWeb受注に移せないかも検討します。AIは「残る紙・FAX・PDF」を減らす手段と考えると、全体の費用対効果が上がります。
目次
  1. 受注入力のAI自動化とは
  2. FAX・PDF注文書の受注入力で自動化できる範囲
  3. 本当の難所は「品名の揺れ」
  4. 人の確認が必要なもの
  5. 見積作成の自動化でできること
  6. AIを入れる前に検討したいこと:EDI・Web受注への切り替え
  7. 自社でできること・専門の会社に頼んだほうがよいこと
  8. よくある質問
  9. まとめ

受注入力のAI自動化とは

受注入力のAI自動化とは、FAXやPDF、メールで届く注文書の内容をAIで読み取り、商品マスタや得意先マスタと照合したうえで、基幹システムや販売管理システムに登録する受注データの下書きを自動で作ることです。

以前から、文字を読み取るOCRは使われてきました。ただし、従来のOCRは「この位置にこの項目がある」と帳票ごとに設定する必要があり、得意先ごとに書式が違う注文書には向きませんでした。AI-OCR(AIを使った文字認識)や生成AIを使うと、書式が違っても「どれが品名で、どれが数量か」を判断して読み取れるようになってきています。生成AIとは、文章を理解して作り出すAIのことで、その中心にあるのがLLM(大規模言語モデル)という仕組みです。

FAX・PDF注文書の受注入力で自動化できる範囲

受注入力の流れを分解すると、AIが得意な部分と、ふつうのプログラムで確実に処理すべき部分、人が判断すべき部分に分かれます。

受注入力の流れと役割分担

工程担い手内容
受け取り仕組みFAXをデータで受信(FAXの電子受信)、メールの添付PDFを自動で取り込む
読み取りAI得意先名、注文番号、品名・品番、数量、単価、納期、納品先、備考を読み取る
照合AI+プログラム得意先の品名・品番を自社の商品コードに結びつける。単価・在庫・与信を確認する
確認人照合で引っかかった項目、備考欄の特別な指示、初めての品目を確認する
登録プログラム確認済みのデータを、基幹システム・販売管理システムに登録する
FAXを紙で受けている場合は、まず電子で受信する方法に切り替えると、取り込みの手間が減ります。

本当の難所は「品名の揺れ」

受注入力で時間がかかるのは、文字を読むことより、「この得意先がこう書いてきた品名は、うちのどの商品か」を判断することです。得意先が独自の品番を使っている、略称で書いてくる、規格の書き方が毎回違う、といったことは商社・卸ではよくあります。ベテランの担当者は、これを頭の中の対応表で処理しています。

この対応表をデータとして整え、AIに使わせるのが自動化の中心です。過去の受注データから「得意先Aの品名X=自社の商品コードY」という組み合わせを集めておけば、AIは候補を高い確度で示せます。初めての書き方は人が確認し、その結果を対応表に足していくことで、少しずつ精度が上がります。

人の確認が必要なもの

  • 手書きの注文書:手書きの数字や訂正は読み取りの誤りが起きやすいため、確認を必須にします
  • 備考欄の指示:「前回と同じ」「分納可」「午前着指定」などの指示は、内容を確認して処理します
  • 単価や数量の異常:いつもと桁が違う数量、登録された単価と違う金額は、得意先への確認が必要な場合があります
  • 初めての品目・得意先:対応表にない組み合わせは、人が判断して登録します

見積作成の自動化でできること

商社・卸では、メールや電話で届く「この品目をこの数量でいくらになるか」という問い合わせに、見積書を作って返す業務も多くあります。生成AIは、問い合わせの文章から品目・数量・納期を拾い出し、見積の下書きを作るのが得意です。

  1. 問い合わせを読み取るメールや添付ファイルから、品目・規格・数量・希望納期を抜き出します
  2. 商品と単価を探す商品マスタ、仕入先の価格表、得意先別の単価、過去の見積から、該当する商品と価格の候補を探します
  3. 下書きを作る見積書の下書きと、得意先への返信文の案を作ります
  4. 人が確認・承認する粗利、在庫、仕入先の納期を確認し、価格を決めて承認します

価格をいくらにするかは、取引の経緯や競合の状況、仕入の条件によって変わる経営判断です。AIに価格を決めさせるのではなく、「探す・まとめる・下書きする」をAIに任せ、価格の判断と承認は人が行う形が現実的です。粗利が基準を下回る場合に警告を出すといったチェックは、ふつうのプログラムで確実に行えます。

AIを入れる前に検討したいこと:EDI・Web受注への切り替え

注文がはじめからデータで届けば、読み取りの誤りは起きません。取引量の多い取引先から、EDI(企業間でデータをやりとりする仕組み)やWeb受注に切り替えられれば、それが最も確実な自動化です。

ただ、すべての取引先が切り替えに応じるわけではありません。小さな取引先ほどFAXやPDFのまま残りがちです。そこで、取引量の多い取引先はEDI・Web受注へ、残るFAX・PDFはAIで読み取るという組み合わせで考えると、全体の手間を大きく減らせます。どの取引先がどの手段で、月に何件注文してくるかを数えてみると、優先順位が見えてきます。

AIではないが関連する当社事例AIを使った事例ではありませんが、当社では、1件の発注で商品情報の転記が3か所で発生し、転記の専任者を置いていた商社(約200名)で、一度入力した情報を必要な場所へ自動で引き継ぐ仕組みづくりをご支援しました。受注入力をAIで自動化する場合も、読み取ったデータを社内で何度も入力し直していては効果が半減します。読み取りの自動化とあわせて、社内の転記をなくす仕組みを見直すことが大切です。詳しくは商社の転記自動化の事例をご覧ください。
想定ケース:従業員40名の機械工具の卸売会社(架空の例)この例は、よくある状況をもとにした架空のモデルケースです。実在の企業の事例ではありません。
得意先約300社のうち、約120社からFAXやPDFで注文が届き、月に約1,800件の注文書を受注担当者3名が入力している会社を想定します。1件あたり、入力と確認で平均5分かかっているとすると、1,800件×5分=月150時間です。
AIで読み取って受注データの下書きを作り、品名の対応表で商品コードを結びつけ、担当者は全件を画面で確認する形にしたとします。確認が1件1.5分、照合で引っかかった約2割(360件)の修正に追加で3分かかるとすると、2,700分+1,080分=月約63時間。削減は月87時間程度の試算です。
うまくいく条件:注文件数の多い得意先から順に対応表を整えること。確認画面で修正した結果が、対応表に自動で反映される仕組みにすること。
つまずきやすい点:手書きの注文書が多い得意先から始めてしまい、精度が出ずに現場が使わなくなること。また、商品マスタに廃番や重複が多く、照合先そのものが整っていないことです。

自社でできること・専門の会社に頼んだほうがよいこと

FAXの電子受信や、市販のAI-OCRサービスを使った読み取りは、自社で始めることもできます。一方で、読み取ったデータを基幹システムにつなぎ、照合と確認の流れまで仕組みにするには、システム開発の知識が必要になります。

自社で進められること得意先ごとの注文の手段と件数の整理、FAXの電子受信への切り替え、品名の対応表の整備、取引先へのEDI・Web受注の打診。
相談したほうがよいこと読み取り結果と商品マスタの照合の仕組み、確認画面の開発、基幹システム・販売管理システムへの登録の連携、見積作成の自動化。
運用で続けること対応表の更新、読み取りの誤りの傾向の確認、新しい得意先や書式への対応。導入後も改善を続ける体制が必要です。

受注データを基幹システムに登録する部分は、システムの仕様や連携の方法によって難しさが大きく変わります。API(システム同士をつなぐ窓口)がない古いシステムでは、CSVでの取り込みや、システム側の改修が必要になることもあります。

受発注の仕組みづくりの費用感を確認
受注入力の自動化や受発注システムの開発にかかる費用の目安は、開発費用の概算シミュレーターで確認できます。いくつかの質問に答えるだけで、登録は不要です。
オーバーエックスのAI業務改善・AIシステム開発オーバーエックスでは、受注入力や見積作成のうちAIで改善できる部分の整理、注文書の読み取りを小さく試すPoC、読み取り結果を商品マスタと照合して基幹システムに登録する仕組みの開発までご相談いただけます。費用は対象の得意先数や連携するシステムによって変わるため、個別にお見積もりします。商社・卸向けのページやAI業務改善・AIシステム開発もご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

FAXの注文書もAIで読み取れますか?
読み取れます。ただし、FAXは画質が粗く、手書きの文字も多いため、PDFやメールの注文書より誤りが起きやすくなります。読み取り結果を人が確認する流れを前提にし、まずは印字された注文書から始めるのがおすすめです。
読み取りの精度は何%くらい出ますか?
注文書の書式、手書きの割合、画質によって大きく変わるため、一概には言えません。実際の注文書を使って小さく試し、自社の注文書でどの程度の精度が出るかを確かめてから判断します。
AIで読み取ったデータを、そのまま基幹システムに登録してよいですか?
おすすめしません。誤出荷や請求の誤りにつながるため、人が確認してから登録する流れにします。照合で問題がなかったものは確認を軽くし、引っかかったものを重点的に見るなど、確認の濃淡をつけると手間が減ります。
取引先にEDIへの切り替えをお願いするべきですか?
取引量の多い取引先には、EDIやWeb受注への切り替えを打診する価値があります。注文がデータで届けば読み取りが不要になるためです。応じてもらえない取引先のFAX・PDFをAIで読み取る、という組み合わせが現実的です。
見積の価格もAIに決めさせられますか?
価格は取引の経緯や仕入の条件で変わる経営判断なので、AIに決めさせるのはおすすめしません。過去の見積や単価表から候補を探し、下書きを作るところまでをAIに任せ、価格の判断と承認は人が行います。

まとめ

FAX・PDFの注文書の受注入力は、AIで読み取りと受注データの下書きまで自動化できます。効果を左右するのは、得意先ごとの品名の書き方を自社の商品マスタに結びつける対応表と、確認の流れの設計です。見積作成も、下書きまでをAIに任せ、価格の判断は人が行う形が現実的です。取引量の多い取引先はEDIやWeb受注に移し、残る紙・FAX・PDFをAIで処理する組み合わせで考えましょう。

参考:当社の導入事例「【商社・約200名】基幹システムの転記を自動化し、専任者なしで回る業務にした事例」。

OX

TechBase 編集部(株式会社オーバーエックス)

東京・秋葉原のシステム開発会社。業務システム・Webシステム・基幹システムの受託開発、システムリプレイス、自社パッケージ開発、要件定義の支援を手がけています。オーバーエックスの特徴を見る

この記事に関連するサービス AI業務改善・AIシステム開発 生成AIなどのAIを、業務の流れや社内のシステムに組み込んで成果が出る形にします。業務の整理、試験導入(PoC)、AIを組み込んだシステムの開発、導入後の運用・改善まで一貫して対応… サービスの詳細を見る

Contact

今すぐ無料相談

全国対応

Page Top