勤怠管理システムを独自開発するケースと費用

勤怠管理はクラウドサービスが充実している分野で、多くの企業が月額制のサービスを利用しています。それでも「現場の特殊なシフトに対応できない」「現場ごとの作業時間を原価として集計したいのに、勤怠サービスとつながらない」といった理由で、独自開発を検討する企業もあります。
この記事では、勤怠管理システムを独自開発するべきケースとそうでないケース、開発費用と期間の目安、法令対応で押さえておきたいポイント、既存サービスと組み合わせる選択肢を解説します。「本当に開発が必要か」を冷静に判断するための材料としてお読みください。
- 勤怠管理は法令対応が必要で標準化も進んでいるため、まずはクラウド勤怠サービスを検討するのが基本です。
- 独自開発が向くのは特殊なシフト・現場別の工数管理・基幹システムとの一体運用が必要な場合です。
- 開発費用は目安として300万〜1,000万円、給与計算や原価管理との連携を含むとさらに増えます。
- 全面開発のほか、クラウド勤怠+連携部分だけを開発する方法も有力な選択肢です。
目次
勤怠管理システムとは
勤怠管理システムとは、従業員の出勤・退勤の打刻、労働時間・残業時間・休憩の集計、休暇の申請と残日数の管理、シフトの作成などを行うシステムです。集計した勤怠データは給与計算に使われるほか、長時間労働の防止や法令で求められる労働時間の記録にも利用されます。
厚生労働省のガイドラインでは、使用者は労働時間を適正に把握する責務があり、始業・終業時刻の確認はタイムカードやICカード、パソコンの使用時間の記録など客観的な記録を基礎とすることが原則とされています(2026年9月時点)。紙の出勤簿や自己申告だけに頼る運用は見直しが求められる場面が増えています。
勤怠管理システムの主な機能
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| 打刻 | PC・スマートフォン・ICカード・生体認証などでの出退勤記録 |
| 労働時間の集計 | 所定・時間外・深夜・休日労働の自動計算 |
| 休暇管理 | 有給休暇の申請・承認、付与と残日数の管理 |
| シフト管理 | シフトの作成・公開、希望の収集 |
| アラート | 残業時間の上限超過や打刻漏れの通知 |
| 連携 | 給与計算ソフト、人事システム、原価管理への出力 |
独自開発より既存サービスが向いているケース
勤怠管理は、多くの企業で必要な機能が共通しており、法改正への対応もサービス提供元が行ってくれるため、クラウドサービスのメリットが大きい分野です。次のような場合は、独自開発より既存サービスの利用を優先して検討するのが合理的です。
- 勤務形態が一般的:固定時間制やシンプルなシフト制、フレックスタイム制が中心
- 法改正への対応を任せたい:社内に労務とシステムの両方に詳しい担当者がいない
- 給与計算ソフトとの連携が主目的:多くのサービスが主要な給与計算ソフトとの連携に対応している
- 早く導入したい:数週間〜数か月で運用を始めたい
勤怠管理システムを独自開発するケース
一方、次のような条件がある場合は、既存サービスでは対応しきれず、独自開発や連携開発を検討する価値があります。
よくあるのは、「勤怠そのもの」よりも「勤怠データを業務にどう使うか」の部分で既存サービスが合わないケースです。たとえば現場作業の工数を案件ごとに集計して原価管理や請求に使いたい場合、勤怠サービスの標準機能では集計の軸が足りず、結局Excelで加工しているという状況が生まれがちです。
全面開発か、連携開発か
クラウド勤怠+連携開発
- 打刻・集計・法令対応は既存サービスに任せる
- APIやCSVで勤怠データを取り出し、原価管理や基幹システムに連携
- 開発範囲が小さく、費用と期間を抑えやすい
全面的な独自開発
- 打刻から集計、シフト、帳票まで自社仕様で構築
- 業務への適合度は最も高い
- 法改正対応や保守の負担が継続的に発生する
多くの場合、まず「クラウド勤怠+連携開発」で解決できないかを検討し、それでも対応できない場合に全面開発を選ぶ、という順番が現実的です。SaaSと開発の一般的な比較はSaaSか自社システム開発かで解説しています。
勤怠管理システムの開発費用と期間の目安
期間は、連携部分のみで2〜3か月、打刻から集計までの全面開発で4〜8か月程度が目安です。ICカードリーダーや生体認証端末を使う場合は、機器の費用と検証の工数が別途かかります。稼働後は保守費として年間で開発費の10〜15%程度に加え、法改正対応の改修費を見込んでおきましょう。
クラウド勤怠サービスは1人あたりの月額料金で提供されるのが一般的なため、従業員数が多い企業ほど長期の総額が大きくなります。とはいえ、法改正対応や保守を自社で担う負担も考えると、単純に「人数が多いから開発が得」とは言い切れません。費用の比較は5年程度の総額で行い、保守体制も含めて判断しましょう。業務システムの費用全般は業務システム費用相場で解説しています。
関連記事業務システム開発の費用相場|機能別の目安と安く抑えるコツ
独自開発で押さえておきたいポイント
- 就業規則と勤務パターンの整理就業規則、36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)、手当の計算ルールを、システム化できる形で整理します。
- 社労士・労務担当との確認集計ルールが法令と就業規則に沿っているかを、専門家と一緒に確認します。
- 打刻方法と現場運用の決定現場で確実に打刻できる手段(スマホ・ICカード等)と、打刻漏れ時の修正フローを決めます。
- 並行稼働での検証1〜2か月は既存の方法と並行して集計し、残業時間や給与への影響額が一致するか確認します。
勤怠の修正や休暇の申請・承認をシステム上で行う場合は、承認の仕組みをワークフローとして設計することになります。詳しくはワークフローシステムの開発・導入の記事も参考にしてください。
よくある質問
- 勤怠管理システムを独自開発するといくらかかりますか?
- 打刻・労働時間の集計・休暇・シフト管理を含む全面開発で300万〜1,000万円程度が目安です。既存のクラウド勤怠サービスとの連携部分だけを開発する場合は、100万〜300万円程度に収まることもあります。
- Excelの出勤簿で勤怠管理を続けても問題ありませんか?
- 厚生労働省のガイドラインでは、労働時間はタイムカードやパソコンの使用記録など客観的な記録で把握することが原則とされています。自己申告のExcelだけに頼る運用は、実態との乖離が生じやすいため見直しを検討しましょう。
- 法改正があった場合、独自開発のシステムはどうなりますか?
- 独自開発のシステムは自動では法改正に対応しないため、改修が必要です。保守契約で法改正対応の範囲や費用を事前に決めておくことが大切です。
まとめ
勤怠管理は標準化が進んだ分野であり、法改正対応を任せられるクラウドサービスの利用が基本です。独自開発を検討すべきなのは、特殊なシフトや勤務体系、現場別の工数管理、基幹システムとの一体運用など、既存サービスでは対応しきれない要件がある場合です。
全面開発の費用は300万〜1,000万円程度が目安ですが、既存サービスと連携部分の開発を組み合わせれば、費用と保守の負担を抑えられます。自社の課題が「勤怠そのもの」なのか「勤怠データの活用」なのかを見極めて判断しましょう。
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