新事業進出・ものづくり補助金でシステム開発する方法と採択のコツ

「新しいサービスを始めるためにシステムを作りたいが、ものづくり補助金は使えるのか」「2026年度から制度が変わったと聞いたが、何が変わったのかわからない」という相談が増えています。システム開発は投資額が大きくなりやすく、補助金を活用できれば負担を大きく減らせますが、対象になる開発とならない開発の線引きを理解していないと、計画づくりで遠回りしてしまいます。
この記事では、2026年度に始まった「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」をシステム開発に活用する方法を、対象になる開発の考え方、枠の選び方、事業計画の書き方と採択のコツ、開発会社との進め方の順に解説します。制度の内容は2026年9月時点の公開情報です。申請の際は必ず最新の公募要領を確認してください。
- 2026年度から、ものづくり補助金と中小企業新事業進出補助金が統合され「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になった
- 「機械装置・システム構築費」が対象経費で、新製品・新サービスや新事業に必要なシステムなら開発費を計上できる
- 既存業務の効率化だけを目的としたシステムは対象になりにくく、事業の新しさと収益の見通しを示す必要がある
- 第1回公募は応募締切が2026年10月30日(18:00)に延長。交付決定前の契約・発注は対象外
目次
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは、中小企業等が行う革新的な新製品・新サービスの開発や、新市場・高付加価値事業への進出、海外市場の開拓に必要な設備投資などを支援する国の補助金です。2026年度に、従来の「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」と「中小企業新事業進出補助金」が統合されて誕生しました。事務局は中小企業基盤整備機構(中小機構)が担っています。
3つの申請枠の概要(2026年第1回公募)
| 申請枠 | 主な対象 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 革新的な新製品・新サービスの開発 | 従業員規模により750万〜2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円) | 中小企業1/2、小規模企業等2/3 |
| 新事業進出枠 | 既存事業と異なる新市場・高付加価値事業への進出 | 従業員規模により2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) | 1/2 |
| グローバル枠 | 海外市場開拓のための国内事業の体制強化 | 新事業進出枠と同水準 | 2/3 |
すべての枠で、補助事業終了後3〜5年の事業計画において、付加価値額の年平均成長率4.0%以上、1人あたり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上高くすることなどが基本要件になっています。
システム開発は対象になる?対象経費の考え方
この補助金では「機械装置・システム構築費」が必須の対象経費で、専用ソフトウェアや情報システムの構築費を計上できます。ほかに、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費なども対象経費に含まれます(上限や条件は公募要領で確認が必要です)。
ただし、どんなシステムでも対象になるわけではありません。ポイントは、そのシステムが「新しい製品・サービスや新事業」を実現するために必要かどうかです。
対象になり得るシステム開発の例
- 新しく始める会員制サービスの予約・決済システム
- 自社製品の稼働データを顧客に提供する新サービスの基盤
- 受注生産から新たに始める個別仕様品のWeb見積・受注システム
- 新たな生産方式を実現する設備と連動した工程管理システム
対象になりにくいシステム開発の例
- 既存業務の勤怠・会計をシステム化するだけ
- 今のExcel管理を置き換えるだけの社内システム
- 既製のパッケージやSaaSを導入するだけ
- ホームページのリニューアルだけ
既製のITツールを導入して業務を効率化したい場合は、デジタル化・AI導入補助金のほうが適しています。自社専用のシステム開発との関係は、次の記事で解説しています。
関連記事IT導入補助金はスクラッチ開発に使える?対象と代替策
システム開発で使う場合の枠の選び方
- 革新的新製品・サービス枠:自社の既存事業の延長で、他社にない新しい製品・サービスを提供するためのシステム。比較的小さな投資規模から申請できる
- 新事業進出枠:既存事業とは異なる市場・顧客に向けた新事業を立ち上げ、その中核となるシステムを作る場合。投資規模が大きい計画向け
- グローバル枠:海外の顧客向けの販売・受注・サポートの仕組みなど、海外市場開拓に必要なシステムの場合
採択されるための事業計画の書き方
システム開発を含む計画では、「システムを作ること」ではなく、「システムによって実現する新しい事業」を審査員に伝えることが重要です。次の流れで一貫したストーリーを作ります。
- 現状と課題自社の強み、既存事業の課題、市場の変化を数字を交えて示す
- 新しい製品・サービスの内容誰に、何を、どのように提供するのか。既存の商品や競合との違いを具体的に書く
- システムの役割そのサービスを実現するために、なぜ専用のシステムが必要なのか、既製品では足りない理由を示す
- 市場性と収益の見通し想定顧客数、単価、売上と付加価値額の計画を、根拠とともに示す
- 実施体制とスケジュール社内の担当者、開発会社、補助事業期間内の開発・検収スケジュールを示す
採択のコツ
- システムの機能説明に偏らない:画面や機能の一覧より、顧客にとっての価値と事業としての収益性を中心に書く
- 見積もりの根拠を明確にする:開発工程ごとの工数と単価がわかる見積もりを用意し、過剰な投資でないことを示す
- 数値目標をそろえる:付加価値額や賃上げの計画と、新サービスの売上計画が矛盾しないようにする
- 加点項目を確認する:賃上げや各種認定など、公募要領の加点項目で対応できるものを確認する
関連記事システム開発の見積もり依頼の進め方|伝えるべき情報と注意点
申請から開発完了までの流れ
2026年第1回公募は、当初2026年9月30日だった応募締切が、事務局の案内により2026年10月30日(金)18:00に延長され、電子申請の受付は9月30日から始まる予定です。申請にはGビズIDのアカウントが必要です。
| 段階 | 発注者がやること | 開発会社との関係 |
|---|---|---|
| 申請前 | 事業計画の作成、GビズIDの取得、見積もりの取得 | 要件の整理と見積もりの作成を依頼(契約はしない) |
| 申請〜採択 | 電子申請、必要に応じて口頭審査への対応 | 開発の準備はしても、契約・発注はしない |
| 交付決定後 | 交付申請と交付決定の受領 | ここで初めて契約・発注できる |
| 補助事業期間 | 開発の進捗管理、検収、支払い | 期間内に開発・納品・支払いまで完了させる |
| 事業完了後 | 実績報告、補助金の受領、数年間の事業化状況の報告 | 保守・改善の契約(補助対象外になることが多い) |
よくある質問
- ものづくり補助金は2026年度もありますか?
- 2026年度から、ものづくり補助金は中小企業新事業進出補助金と統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として公募されています。システム構築費は、この新しい制度の対象経費に含まれます。
- 社内の業務効率化のシステムにも使えますか?
- 既存業務の効率化だけを目的としたシステムは対象になりにくいと考えられます。新製品・新サービスや新事業の実現に必要なシステムであることを、事業計画で示す必要があります。
- 申請前に開発会社と契約してもよいですか?
- 交付決定前に契約・発注した経費は原則として対象外です。申請前は見積もりの取得と要件の整理までにとどめ、契約は交付決定後に行いましょう。
- 開発後の保守費用も補助されますか?
- 補助事業期間の終了後に発生する保守費用は、一般的に対象外です。クラウドサービス利用費なども、補助事業期間内の分に限られるなど条件があるため、公募要領で確認してください。
まとめ
2026年度の新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は、新製品・新サービスや新事業に必要なシステム構築費を対象にでき、システム開発で活用しやすい制度です。一方で、既存業務の効率化だけを目的とした開発は対象になりにくく、事業の新しさと収益の見通しを示す計画づくりが欠かせません。
交付決定後の契約、期間内の完了、後払いといったルールを踏まえ、開発会社と早めにスケジュールと見積もりを固めて申請に臨みましょう。
関連記事事業再構築補助金はどうなった?後継制度とシステム開発費
参考:中小機構:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金/ミラサポplus:第1回公募要領の公開(いずれも2026年9月時点)
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