ECサイトをスクラッチで構築すべきケースと費用

ECサイトを立ち上げる、あるいは今のECサイトを作り直す際、「ASPやECパッケージではなくスクラッチで作るべきか」は大きな判断です。スクラッチなら自由度は高いものの費用も期間もかかり、逆に既製サービスで始めたものの、自社の商習慣や基幹システムとの連携に対応できず困っているという声も聞かれます。
この記事では、ECサイトの主な構築方法を比較したうえで、スクラッチで構築すべきケース・そうでないケースの判断基準、費用の目安、進め方の注意点を解説します。自社にとって最適な構築方法を見極めるための材料にしてください。
- ECサイトの構築方法はASP・SaaS型、オープンソース、ECパッケージ、スクラッチの4つが主流。
- スクラッチが向くのは、BtoBの複雑な取引条件、基幹システムとの密な連携、独自の販売モデルがあるケース。
- スクラッチ構築の費用目安は1,000万〜5,000万円以上、期間は6か月〜1年以上。保守費も継続的にかかる。
- 一般的な小売ECなら既製サービスで十分なことが多い。「標準機能で困る点」を具体化してから判断することが重要。
目次
ECサイトのスクラッチ構築とは
ECサイトのスクラッチ構築とは、既製のECシステムを使わず、商品管理・カート・決済・受注管理などの機能をゼロから設計・開発してECサイトを構築することです。自社の業務や販売戦略に合わせて自由に作れる反面、費用と期間は他の方法より大きくなります。
ECサイトの主な構築方法と比較
| 構築方法 | 初期費用の目安 | 自由度 | 向いている規模・ケース |
|---|---|---|---|
| ASP・SaaS型(ネットショップ作成サービス) | 0円〜数十万円+月額 | 低〜中 | 小〜中規模。早く始めたい |
| オープンソース | 数十万〜数百万円 | 中〜高 | 技術者がいる、費用を抑えてカスタマイズしたい |
| ECパッケージ | 500万〜数千万円 | 高 | 中〜大規模。標準機能を土台に独自化したい |
| スクラッチ | 1,000万〜5,000万円以上 | 非常に高い | 独自の取引・業務、基幹システムと一体で運用 |
金額はいずれも目安で、デザインや機能、連携の範囲によって大きく変わります。ASP・SaaS型は月額費用や売上に応じた手数料がかかるため、長期的な総額でも比較が必要です。各サービスの料金は変わることがあるため、検討時に公式サイトで最新の情報を確認しましょう。
関連記事スクラッチ開発とパッケージの違い|費用・期間・向いている企業
スクラッチで構築すべきケース
スクラッチを選ぶべきかどうかは、「既製サービスやパッケージの標準機能では実現できない、事業上重要な要件があるか」で判断します。
スクラッチが向くケース・向かないケース
スクラッチが向くケース
- BtoBで取引先ごとの価格・掛け率・与信・締め支払いがある
- 基幹システム・在庫・生産管理とリアルタイムに連携したい
- 定期購入や組み合わせ販売など独自の販売モデルがある
- 受注から出荷まで独自の業務フローがある
- 大量アクセス・大量商品への対応や拡張性を重視する
スクラッチが向かないケース
- 一般的な小売で、標準機能で要件を満たせる
- まずEC事業の反応を試したい段階
- 予算が数百万円以内、公開を急ぎたい
- 公開後に保守・改修を任せる体制がない
- 要件が固まっておらず、自由に変えたいだけ
BtoB ECはスクラッチが検討されやすい
企業間取引のECでは、取引先ごとの価格表、掛け売り(請求書払い)、与信限度額、承認フロー、見積もりからの発注など、一般消費者向けECにはない要件が多くあります。BtoB向けのパッケージやサービスもありますが、既存の商習慣を大きく変えずにECへ移行したい場合、スクラッチや大幅なカスタマイズが選ばれやすくなります。
基幹システムとの連携が肝になるケース
在庫や受注を基幹システムで管理している場合、ECサイトの注文を手作業で転記していると、在庫のずれや処理の遅れが起こります。在庫・価格・出荷状況をリアルタイムに連携させたい場合、連携を前提に設計できるスクラッチが有利になることがあります。
関連記事API連携とは?既存システムをつなぐ開発の費用と注意点
スクラッチ構築の費用と内訳
スクラッチ構築の費用は、機能の範囲と連携先の数によって大きく変わります。一般的な目安と、費用がかかる主な項目は次のとおりです。
スクラッチECの費用がかかる主な領域(イメージ)
スクラッチ開発は人月(1人が1か月作業する量)で見積もられることが多く、人月単価の目安はPMで100万〜160万円、SEで80万〜120万円、PGで60万〜100万円程度です。公開後は、サーバー費、決済手数料、セキュリティ対応を含む保守費(年間で開発費の10〜15%程度が目安)が継続的にかかります。
スクラッチECの進め方
- 現状業務と課題の整理受注から出荷・請求までの流れと、既製サービスで困っている点を具体的に洗い出します。
- 構築方法の比較・判断既製サービス、パッケージ、部分開発、スクラッチの費用と実現範囲を比較します。
- 要件定義取引条件、画面、管理機能、基幹システムとの連携、データ移行の範囲を決めます。
- 設計・開発・テスト決済・在庫連携・大量アクセス時の動作まで、本番に近い条件で確認します。
- 公開・運用改善公開後のアクセスや受注データを見ながら、機能を段階的に改善します。
スクラッチでEC構築を進める際の注意点
- 要件定義に十分な時間をかける:取引条件や業務フローを洗い出さずに開発を始めると、手戻りと追加費用が発生しやすくなります。
- 決済は決済代行サービスを使う:カード情報を自社で保持しない構成にすることで、セキュリティ対策の負担を大きく減らせます。
- セキュリティ対策を費用に含める:ECサイトは攻撃の標的になりやすく、脆弱性診断や継続的な更新が欠かせません。
- 段階的に公開する:全機能を一度に作らず、必須機能で公開して段階的に拡張すると、リスクと初期費用を抑えられます。
- 保守できる体制を確保する:スクラッチは開発した会社以外が引き継ぎにくい面があるため、設計書の整備と保守契約の内容を確認しておきます。
関連記事Webシステム開発の流れと費用|依頼前に知るべきこと
よくある質問
- ECサイトをスクラッチで作ると最低いくらかかりますか?
- 機能を絞った場合でも、一般的には1,000万円前後からが目安です。BtoBの取引条件や基幹システムとの連携を含めると数千万円規模になることもあります。要件によって大きく変わるため、複数社から同じ条件で見積もりを取って比較しましょう。
- 既製のECサービスからスクラッチに移行できますか?
- 移行は可能です。商品・会員・注文履歴などのデータを移す必要があり、移行元のサービスからどの形式でデータを出力できるかを事前に確認することが重要です。会員のパスワードなど移行できないデータもあるため、移行計画を慎重に立てましょう。
- スクラッチ構築にはどのくらいの期間がかかりますか?
- 一般的に6か月〜1年以上が目安です。要件定義に2〜3か月、設計・開発・テストに4〜9か月程度かかるケースが多く、基幹システムとの連携やデータ移行があるとさらに長くなります。
まとめ
ECサイトのスクラッチ構築は、BtoBの複雑な取引条件、基幹システムとの密な連携、独自の販売モデルなど、既製サービスでは対応が難しい要件がある場合に有力な選択肢です。費用は1,000万〜5,000万円以上、期間は6か月〜1年以上が目安で、公開後の保守費も継続的にかかります。まずは既製サービスで困る点を具体化し、部分的な個別開発も含めて比較したうえで判断しましょう。
この記事に関連するサービス
Webシステム開発
会員サイト、予約システム、取引先向けの受発注ポータル、社内の申請システムなど、ブラウザで使うシステムを開発します。スマートフォン対応、決済やメール配信などの外部サービスとの連携にも… サービスの詳細を見る



