SaaSか自社システム開発か?判断基準とコスト比較

業務のシステム化を考えたとき、多くの企業が最初に迷うのが「SaaSを使うか、自社専用のシステムを開発するか」です。SaaSは手軽に始められる一方で、業務に合わない部分が出てきます。自社開発は業務にぴったり合わせられる一方で、費用と期間がかかります。
この記事では、SaaSと自社システム開発の違いを整理し、どちらを選ぶべきかの判断基準を6つの軸で解説します。あわせて、初期費用だけでなく5年間の総コストで比較する考え方と、両方を組み合わせる選択肢も紹介します。
- 業務が一般的で、ツールに合わせられるならSaaSが第一候補
- 業務の独自性が競争力の源泉になっている、連携が多い場合は自社開発が有力
- コストは初期費用ではなく5年程度の総保有コスト(TCO)で比較する
- 「コア業務は自社開発、周辺業務はSaaS」という組み合わせが現実解になることも多い
目次
SaaSと自社システム開発の違い
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由で提供されるソフトウェアを、月額などの利用料を払って使うサービスのことです。自社システム開発とは、自社の業務に合わせて専用のシステムを設計・開発することで、一から作る場合はスクラッチ開発とも呼ばれます。
SaaSと自社システム開発の比較
| 項目 | SaaS | 自社システム開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 小さい(無料〜数十万円程度の設定費用) | 大きい(数百万〜数千万円程度) |
| ランニング費用 | 利用人数・プランに応じた月額料金 | 保守費(年間で開発費の10〜15%程度)+インフラ費 |
| 導入期間 | 数日〜数か月 | 数か月〜1年程度 |
| 業務への適合 | 業務をツールに合わせる | システムを業務に合わせる |
| 機能追加・変更 | 提供元の方針次第 | 自社の判断で可能(費用は発生) |
| データの管理 | 提供元の環境に保存 | 自社で保存場所・方法を決められる |
| サービス終了リスク | 提供元の都合で終了・値上げの可能性 | 自社で継続を判断できる |
パッケージソフト(買い切りやライセンス型)も含めた比較は、次の記事で詳しく解説しています。
関連記事スクラッチ開発とパッケージの違い|費用・期間・向いている企業
SaaSか自社開発かを決める6つの判断基準
- 業務の独自性:自社のやり方が他社との差別化になっているか。独自の料金体系や工程管理が強みなら、ツールに合わせることで強みを失うおそれがある
- 業務をツールに合わせられるか:現場が業務の変更を受け入れられるか。合わせられない部分が多いと、Excelでの補完が残り効果が薄れる
- 他システムとの連携:基幹システムや会計、取引先システムとの連携が多いか。連携の自由度が必要なら自社開発が有利
- データの管理要件:顧客情報や技術情報の保存場所・保存期間に社内規程や取引先との約束があるか
- 利用人数と利用期間:人数が多く長期間使うほど、月額課金の累計が大きくなる
- 社内の体制:システムの企画・保守を担える人がいるか。いない場合は、SaaSか、保守を任せられる開発会社を選ぶ
SaaSが向いているケース
勤怠管理、経費精算、会計、名刺管理など、法令や一般的な業務慣行に沿って行う業務はSaaSが得意とする領域です。制度改正への対応を提供元が行ってくれる点も大きなメリットです。業務を標準に合わせることで、むしろ業務改善になるケースもあります。
自社開発が向いているケース
受注から生産・出荷までの独自の管理、業界特有の見積もりロジック、複数のシステムをまたぐデータの一元管理などは、自社開発が力を発揮する領域です。SaaSを複数組み合わせた結果、二重入力やデータの食い違いが発生している場合も、自社開発で一元化を検討する価値があります。
コスト比較は5年間の総保有コスト(TCO)で
TCO(Total Cost of Ownership)とは、システムの導入から運用・保守・廃棄までにかかる費用の総額です。SaaSは初期費用が小さい分、月額費用が積み上がります。自社開発は初期費用が大きい分、利用人数が増えても費用が大きく変わりにくいという特徴があります。
試算の考え方(例)
ここでは考え方を示すために、仮の条件で比較します。実際の金額はサービスや要件によって異なるため、自社の条件に置き換えて試算してください。
| 項目 | SaaS(仮に1人月額5,000円・50人) | 自社開発(仮に開発費800万円) |
|---|---|---|
| 初期費用 | 設定・データ移行 50万円 | 800万円 |
| 年間費用 | 300万円(5,000円×50人×12か月) | 保守費100万円+インフラ費30万円 |
| 5年間の合計 | 約1,550万円 | 約1,450万円 |
5年間の総コストのイメージ(上の仮条件の場合)
この例では5年でほぼ同水準ですが、利用人数が10人ならSaaSが大幅に有利になり、100人なら自社開発が有利になります。また、SaaSでは足りない機能を補うための追加ツール費や手作業の人件費、自社開発では機能追加の費用も考慮する必要があります。
関連記事業務システム開発の費用相場|機能別の目安と安く抑えるコツ
SaaSと自社開発を組み合わせる
SaaSか自社開発かの二択で考える必要はありません。多くの企業では、両方を組み合わせるのが現実的です。
この形なら、法令対応が必要な領域はSaaSの提供元に任せつつ、競争力に関わる部分は自社で自由に改善していけます。
判断の進め方
- 業務を分類する対象業務を洗い出し、「自社の強みに関わる業務」と「標準的なやり方で問題ない業務」に分ける
- SaaSの適合度を確認する候補となるSaaSの無料トライアルやデモで、業務の何割がそのまま使えるかを確認する
- 不足分の対応方法を検討する合わない部分を業務変更で吸収できるか、カスタマイズや追加開発が必要かを整理する
- 5年間の総コストで比較するSaaS・自社開発・組み合わせの各案について、初期費用とランニング費用、社内の手作業の工数まで含めて比較する
SaaSの適合度がおおむね8割を超え、残りを業務の見直しで吸収できるならSaaSを、適合度が低く独自の要件が多いなら自社開発を中心に考えるのがひとつの目安です。
よくある質問
- SaaSをカスタマイズして使うのと自社開発はどちらがよいですか?
- SaaSのカスタマイズ範囲は提供元が定めた範囲に限られ、大幅なカスタマイズは費用がかさむうえ、バージョンアップで動かなくなるリスクもあります。カスタマイズ量が多くなる見込みなら、自社開発も比較対象に入れて検討するのがおすすめです。
- 最初はSaaSで始めて、後から自社開発に移行できますか?
- 可能です。SaaSで業務を回しながら要件を固め、限界が見えた段階で自社開発に移行する進め方もあります。その場合は、SaaSからデータを出力できるか(CSVやAPI)を導入前に確認しておくと移行がスムーズです。
- 自社開発したシステムの保守は誰が行いますか?
- 社内にエンジニアがいない場合は、開発した会社や保守を専門に請け負う会社に委託するのが一般的です。発注時に保守の範囲と費用を契約で明確にしておくことが大切です。
まとめ
SaaSと自社システム開発は、どちらが優れているかではなく、業務の性質と会社の状況によって向き不向きが決まります。業務の独自性、連携、データ管理、利用人数、社内体制を軸に判断し、コストは5年程度の総保有コストで比較しましょう。コア業務は自社開発、周辺業務はSaaSという組み合わせも有力な選択肢です。
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