システム開発の相見積もりの取り方と比較のコツ

「3社に見積もりを取ったら、金額が2倍以上違った」「どの見積もりが妥当なのか判断できない」。システム開発の相見積もりでは、こうした悩みがよく聞かれます。同じ依頼をしたつもりでも、各社の前提や解釈が違えば、見積もりはまったく別物になります。
この記事では、システム開発の相見積もりを取るときの社数の目安、比較できる状態にするための条件のそろえ方、金額差が生まれる理由、比較表の作り方、そして断り方のマナーまでを順に解説します。
- 相見積もりは3社前後が目安。多すぎると比較と説明の負担が増え、各社の提案の質も下がりやすい
- 比較の前提は全社に同じ資料・同じ条件で依頼すること。RFP(提案依頼書)を用意すると差が見えやすい
- 金額差の多くは「範囲」「工数の見積もり方」「体制」の違い。総額ではなく内訳と前提条件で比べる
- 最安値ではなく、要件の理解度と説明の具体性で選ぶ。断る会社にも早めに丁寧に連絡する
目次
システム開発の相見積もりとは
システム開発の相見積もりとは、同じ開発内容について複数の開発会社から見積もりを取り、金額・内容・体制を比較して依頼先を選ぶ方法です。システム開発には定価がなく、会社ごとに見積もりの考え方が異なるため、1社だけの見積もりでは金額が妥当かどうか判断できません。
相見積もりの目的は「一番安い会社を探すこと」ではありません。各社の提案を比べることで、自社の要件の抜け漏れに気づいたり、適正な価格帯を把握したりすることにも意味があります。
相見積もりは何社に依頼すべきか
一般的には3社前後が目安です。2社では比較の軸が少なく、5社以上になると、各社との打ち合わせや質問対応に発注者側の時間が取られ、比較そのものが雑になりがちです。
依頼社数ごとのメリット・注意点
| 社数 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 2社 | 対応負担が小さい | どちらが標準的か判断しにくい |
| 3〜4社 | 価格帯と提案の傾向がつかめる | 比較表の準備が必要 |
| 5社以上 | 選択肢が広がる | 説明・質問対応の負担が大きく、各社の熱量も下がりやすい |
概算見積もりと詳細見積もりの違い
相見積もりを取る前に、いま必要なのが「概算見積もり」なのか「詳細見積もり」なのかを整理しておきましょう。この区別があいまいなまま比較すると、精度の違う見積もり同士を並べてしまうことになります。
概算見積もりと詳細見積もり
| 項目 | 概算見積もり | 詳細見積もり |
|---|---|---|
| タイミング | 構想・予算取りの段階 | 要件がある程度固まった段階 |
| 必要な情報 | 目的、主な機能、利用規模 | 機能一覧、画面・帳票のイメージ、連携先、非機能要件 |
| 金額の精度 | 幅が大きい(上下に数十%程度ぶれることもある) | 範囲と前提が明確で、ぶれが小さい |
| 使いみち | 予算の確保、候補会社の絞り込み | 発注先の決定、契約金額の確定 |
概算の段階で最安値の会社に絞り込んでしまうと、詳細見積もりで金額が大きく上がることがあります。概算段階では金額よりも、前提条件の書き方や質問の的確さを重視して候補を選ぶのがおすすめです。
比較できる相見積もりにするための準備
相見積もりでもっとも多い失敗は、各社に伝えた内容がばらばらで、見積もりを横に並べても比べられないことです。次の準備をしてから依頼しましょう。
- 依頼内容を文書にまとめる目的、現状の課題、必要な機能、利用人数、希望納期、予算感をRFPや要望書に整理する
- 全社に同じ資料を渡す口頭の補足は議事録に残し、ほかの会社にも共有して条件をそろえる
- 見積もりの書式を指定する工程別・機能別の内訳、人月単価、前提条件、含まない作業を記載するよう依頼する
- 質問の窓口と回答期限を決める各社からの質問と回答を一覧にし、全社へ同じ回答を返す
- 提出期限と評価方法を伝える2〜3週間程度の期間を取り、価格以外も評価することを伝える
関連記事RFP(提案依頼書)の書き方|システム開発の項目例とテンプレート
見積もり金額に差が出る主な理由
同じ資料を渡しても、見積もり額に1.5〜2倍程度の差が出ることは珍しくありません。差の理由を理解しておくと、どの見積もりが自社にとって妥当かを判断しやすくなります。
安い見積もりは「範囲が狭い」「リスクを見込んでいない」だけの場合もあります。安い理由が説明できない見積もりは、開発途中の追加費用につながりやすい点に注意しましょう。
相見積もりの比較表の作り方
比較は総額ではなく、項目ごとに行います。以下のような比較表をつくり、空欄になった項目は各社に確認します。
相見積もり比較表の例
| 比較項目 | 確認するポイント |
|---|---|
| 総額・支払条件 | 一括か分割か、税込・税抜の区別 |
| 工程別の内訳 | 要件定義・設計・開発・テスト・移行の配分に極端な偏りがないか |
| 作業範囲 | 含む作業・含まない作業が明記されているか |
| 体制と単価 | 役割ごとの人数と単価、再委託の有無 |
| スケジュール | 納期の根拠、発注者側の作業負担 |
| 前提条件・リスク | 前提が崩れた場合の追加費用の扱い |
| 保守・運用 | 保守費の目安、対応範囲、ソースコードの扱い |
| 提案内容 | 課題の理解度、代替案や改善提案の有無 |
工程別の内訳が妥当かどうかの判断基準は、別の記事で詳しく解説しています。人月単価の相場感をつかんでおくと、体制と金額のバランスも確認しやすくなります。
関連記事システム開発の見積もりは妥当?チェックすべき7つのポイント
相見積もりで避けたいNG行動
望ましい進め方
- 相見積もりであることを最初に伝える
- 全社に同じ情報を同じタイミングで渡す
- 不明点は各社に質問して前提をそろえる
- 選定理由と結果を全社に連絡する
避けたい進め方
- 他社の見積額を見せて値下げを迫る
- 一部の会社にだけ追加情報を渡す
- 総額だけで比較して即決する
- 断りの連絡をせず放置する
他社の金額を示して値引きを求めると、開発会社は範囲を削ったり、体制を薄くしたりして帳尻を合わせることがあります。価格を下げたい場合は、機能の優先順位を見直すなど、範囲の調整で相談するのが健全です。
断るときのマナー
見積もりの作成には開発会社側で数日〜数週間の工数がかかっています。依頼先が決まったら、ほかの会社にも早めに連絡しましょう。理由は「今回は要件との適合度を総合的に判断した」程度で十分です。丁寧に対応しておけば、将来別の案件で相談しやすい関係を保てます。
無料テンプレートシステム開発の無料テンプレート集|RFP・要件定義書・見積もり比較表・保守契約チェックリスト
よくある質問
- 相見積もりを取ることは開発会社に伝えるべきですか?
- 伝えるのが一般的です。相見積もりであることを知っていれば、開発会社は比較されやすいように内訳や前提を丁寧に書く傾向があります。隠す必要はありません。
- 見積もりが一番安い会社を選んでもよいですか?
- 安い理由が明確で、範囲や品質が他社と同等なら問題ありません。ただし、範囲が狭い、テストが薄いなどの理由で安い場合は、後から追加費用が発生しやすいため、内訳を確認してから判断しましょう。
- 相見積もりにはどのくらいの期間を見込めばよいですか?
- 資料準備から依頼、質疑応答、見積もり受領、比較・選定までで、1〜2か月程度が目安です。見積もりの作成期間だけでも2〜3週間は確保すると、各社から精度の高い見積もりが得やすくなります。
まとめ
システム開発の相見積もりは、3社前後に同じ条件で依頼し、総額ではなく内訳・範囲・前提条件で比較するのが基本です。金額差の理由を各社に確認することで、自社の要件の抜け漏れにも気づけます。価格だけでなく、要件の理解度や説明の具体性も含めて、長く付き合える開発会社を選びましょう。
この記事に関連するサービス
受託システム開発
業務システム・Webシステム・基幹システムを、要件が固まる前のご相談から設計・開発・運用保守まで一貫して開発します。プロトタイプで早い段階から画面を確認でき、開発資産の活用で品質を… サービスの詳細を見る



