スクラッチ開発とは?メリット・デメリットと費用

「開発会社からスクラッチ開発を提案されたが、どういう意味なのかよくわからない」「スクラッチは高いと聞くが、本当に自社に必要なのか」。システム化を検討する中で、スクラッチ開発という言葉を目にする機会は多いものの、その意味や向き不向きを正確に理解している発注担当者は多くありません。
この記事では、スクラッチ開発の定義と、フルスクラッチ・セミスクラッチの違い、メリット・デメリット、費用と期間の目安、スクラッチ開発が向いている企業の条件を解説します。パッケージとの詳しい比較は別記事で扱っているため、ここではスクラッチ開発そのものの理解に焦点を当てます。
- スクラッチ開発とは、既製品を使わず自社の業務に合わせてゼロから設計・開発する方法です。
- 最大のメリットは業務への適合度と拡張の自由度、デメリットは初期費用と期間です。
- 費用の目安は小規模な業務システムで数百万円〜、中規模で1,000万円前後から、基幹システムでは数千万円以上になります。
- 業務が独自で競争力の源泉になっている場合や、パッケージでは運用が回らない場合に向いています。
目次
スクラッチ開発とは?
スクラッチ開発とは、パッケージソフトや既存のシステムを土台にせず、発注者の業務や要件に合わせてシステムを一から設計・開発する手法のことです。「スクラッチ(scratch)」は英語で「最初から、ゼロから」という意味で、オーダーメイドのシステム開発を指す言葉として使われています。
既製品のパッケージは「製品に業務を合わせる」のに対し、スクラッチ開発は「業務にシステムを合わせる」のが基本的な考え方です。そのため、自社独自の業務ルールや帳票、他システムとの連携などを要件どおりに実現できます。
フルスクラッチとセミスクラッチの違い
スクラッチ開発には、すべてを一から作る「フルスクラッチ」と、既存のフレームワークや部品、自社の開発基盤などを活用して必要な部分だけを作り込む「セミスクラッチ」があります。現在の受託開発では、ログイン機能や管理画面などの共通部分に実績のある部品を使い、業務固有の部分を作り込むセミスクラッチ的な進め方が一般的です。
| 項目 | フルスクラッチ | セミスクラッチ |
|---|---|---|
| 作り方 | すべてを一から設計・開発 | 既存の部品・基盤を活用し、独自部分を開発 |
| 自由度 | 最も高い | 高い(基盤の制約を一部受ける) |
| 費用・期間 | 大きくなりやすい | フルスクラッチより抑えやすい |
| 向いているケース | 特殊な要件、大規模・長期利用のシステム | 多くの業務システム・Webシステム |
スクラッチ開発のメリット・デメリット
メリット
- 自社の業務フローに合わせたシステムにできる
- 不要な機能がなく、画面や操作がシンプルになる
- 既存システムや外部サービスと自由に連携できる
- 事業の変化に合わせて機能を追加・変更しやすい
- ライセンス費用がかからず、利用者数に縛られない
デメリット
- 初期費用が高くなりやすい
- 要件定義から稼働まで期間がかかる
- 要件定義の質が完成度を大きく左右する
- 開発会社に依存しやすく、ブラックボックス化の恐れがある
- 保守を自社または委託先で継続する必要がある
デメリットのうち、ブラックボックス化と開発会社への依存は、設計書やソースコードの納品範囲を契約で明確にし、保守体制を最初から考えておくことで軽減できます。
スクラッチ開発の費用と期間の目安
スクラッチ開発の費用は、主に「開発に携わる人数×期間×人月単価」で決まります。人月単価の目安はPMで100万〜160万円、SEで80万〜120万円、PGで60万〜100万円程度です。規模別の費用と期間の目安は次のとおりです。
| 規模の目安 | システムの例 | 費用の目安 | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 単一業務の管理システム、Excel業務の置き換え | 300万〜800万円程度 | 3〜6か月 |
| 中規模 | 複数部署の業務システム、会員向けWebシステム | 800万〜3,000万円程度 | 6か月〜1年 |
| 大規模 | 基幹システム、多数の外部連携を持つシステム | 3,000万円〜数億円 | 1年以上 |
いずれも目安であり、機能数や連携先、データ移行の有無によって大きく変わります。また稼働後は保守費用として年間で開発費の10〜15%程度がかかることも見込んでおきましょう。
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スクラッチ開発が向いている企業・ケース
スクラッチ開発は万能ではありません。パッケージやSaaSで十分な業務にスクラッチを選ぶと、費用が過大になります。次の条件に当てはまるほど、スクラッチ開発を検討する価値があります。
- 業務が独自:受注生産の工程管理や独特の価格計算など、他社と異なる業務ルールがある。
- 業務が競争力の源泉:その業務のやり方自体が自社の強みで、パッケージに合わせたくない。
- パッケージのカスタマイズが大きい:導入してもカスタマイズ費用がかさみ、スクラッチと変わらない。
- 連携が多い:既存の基幹システムや外部サービスとの連携が多数必要。
- 長く使い続ける:10年程度の長期利用を想定し、段階的な機能追加を見込んでいる。
- 利用者が多い:SaaSの利用者課金が高額になり、長期的には自社開発の方が割安になる。
開発手法の選び方の目安
スクラッチ開発を成功させるポイント
- 目的と優先度を明確にする「何でも作れる」ことが逆に要件の膨張を招きます。目的に照らして必須機能を絞ります。
- 要件定義に時間をかけるスクラッチ開発の完成度は要件定義で決まります。現場を巻き込み、業務の例外まで洗い出します。
- 納品物と権利を契約で決めるソースコード、設計書の納品と著作権の扱いを確認し、将来の保守先変更にも備えます。
- 段階的にリリースする最初は必須機能に絞って稼働させ、使いながら改善することで投資リスクを抑えます。
スクラッチ開発の依頼先を選ぶ観点
スクラッチ開発は開発会社の力量が完成度に直結するため、依頼先選びも重要です。見積金額だけでなく、次の観点で比較しましょう。
- 業務理解力:自社の業務について的確な質問をしてくるか。業務の言葉で説明できるか。
- 要件定義の進め方:ヒアリングの方法、要件定義書のサンプル、優先度づけの考え方を示せるか。
- 納品物と権利:設計書・ソースコードの納品や著作権の扱いが明確か。
- 保守体制:稼働後の保守・改修をどのような体制と費用で行うか。
- 提案の幅:スクラッチ以外の選択肢(パッケージやSaaSの併用)も検討したうえで提案しているか。
何でもスクラッチで作ることを勧めるのではなく、既製品で足りる部分は既製品を使う提案ができる会社は、費用対効果を重視しているといえます。
よくある質問
- スクラッチ開発とパッケージ導入はどちらが安いですか?
- 初期費用はパッケージの方が安いことが一般的です。ただし大幅なカスタマイズが必要な場合や、利用者数に応じたライセンス費用が長期間かかる場合は、総額でスクラッチ開発が有利になることもあります。
- スクラッチ開発したシステムを別の会社に保守してもらえますか?
- ソースコードと設計書がそろっていれば可能です。ただし引き継ぎには調査の期間と費用がかかるため、開発時に納品物と権利関係を契約で明確にしておくことが重要です。
- スクラッチ開発に補助金は使えますか?
- 制度によっては対象になります。たとえば新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(2026年9月時点)など、システム構築費を対象経費に含む制度があります。対象条件や公募時期は年度ごとに変わるため、最新の公募要領を確認してください。
まとめ
スクラッチ開発とは、自社の業務に合わせてシステムを一から開発する手法で、業務への適合度と拡張性が高い一方、初期費用と期間がかかります。業務が独自で競争力に直結する場合や、パッケージでは運用が回らない場合に向いています。パッケージとの詳しい比較は関連記事もあわせてご覧ください。
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