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ベンダーロックインとは|技術・契約・知識の3つの原因と抜け出す手順、契約で防ぐ方法(著作権・ソースコード・名義)

ベンダーロックインとは|技術・契約・知識の3つの原因と抜け出す手順、契約で防ぐ方法(著作権・ソースコード・名義)

「改修を頼むたびに見積もりが高い」「ほかの開発会社に相談したら、中身がわからないと断られた」「今の会社以外に頼めないので、対応が遅くても我慢するしかない」。こうした状態は、ベンダーロックインと呼ばれます。気づいたときには、システムを動かし続けるために、特定の1社に頼らざるを得なくなっていることが少なくありません。

この記事では、ベンダーロックインの意味と種類、起きる原因、問題になっているサイン、抜け出すための手順、そしてこれから契約する際に防ぐための条項を、公的な資料も参照しながら発注者向けに解説します。

この記事の結論
  • ベンダーロックインとは、特定の開発会社(ベンダー)以外では、システムの保守や改修ができなくなった状態のことです。技術・契約・知識の3つの面から起きます。
  • 公正取引委員会の調査では、官公庁が既存ベンダーと再契約した理由として「既存ベンダーしか機能の詳細を把握できなかった」が最も多く挙げられています。原因の中心は、情報と権利が発注者側にないことです。
  • 抜け出すには、資産の棚卸し→権利の確認→資料の整備→段階的な移行→保守の引き継ぎの順に進めます。
  • 防ぐには、契約で著作権・ソースコードの引き渡し・ドキュメント・アカウントの名義を決めておくことが重要です。
目次
  1. ベンダーロックインとは
  2. ベンダーロックインが起きる原因
  3. ベンダーロックインが問題になっているサイン
  4. ベンダーロックインから抜け出す手順
  5. 契約でベンダーロックインを防ぐ方法
  6. 契約以外にできる予防策
  7. よくある質問
  8. まとめ

ベンダーロックインとは

ベンダーロックインとは、システムの保守や改修を、特定の開発会社(ベンダー)に頼り続けなければならない状態のことです。ほかの会社に乗り換えようとしても、技術・契約・知識のいずれかの理由で、事実上できなくなっています。

公正取引委員会は、ベンダーロックインを「特定のシステムベンダーを利用し続けなくてはならない状態」と説明しています。デジタル庁も、特定ベンダーの技術仕様などに依存し、そのベンダー以外の企業が運用・保守や改修を担うことが事実上不可能になった状態を指す言葉として使っています。官公庁の調達でも、避けるべき課題として取り上げられているテーマです。

技術的なロックイン特定の会社の独自製品や、独自のフレームワークで作られているため、ほかの会社では扱えない状態です。
契約的なロックインソースコードの著作権が開発会社にある、引き渡しの取り決めがないなど、契約上ほかの会社に任せられない状態です。
知識的なロックイン仕様書がなく、システムの中身を知っているのが今の開発会社の担当者だけという状態です。

実際には、この3つが重なって起きていることがほとんどです。たとえば「独自の仕組みで作られ、資料もなく、ソースコードの権利も開発会社にある」という状態では、どれか1つを解決しても乗り換えは進みません。

ベンダーロックインが起きる原因

ベンダーロックインは、開発会社が意図して起こすこともありますが、多くは長い付き合いの中で自然に進みます。主な原因は次のとおりです。

  • システムの中身を開発会社だけが知っている:改修の記録や仕様の情報が、開発会社の担当者の頭の中にしかない状態です
  • ソースコードや資料が手元にない:契約で納品物の範囲を決めておらず、設計書やソースコードを受け取っていません
  • 権利が開発会社にある:ソースコードの著作権が開発会社に帰属し、ほかの会社に改修させることが契約上難しくなっています
  • 独自製品や独自技術を使っている:開発会社の自社パッケージや独自の部品をもとに作られています
  • アカウントが開発会社の名義:サーバー、クラウド、ドメインの契約や管理者アカウントを開発会社が持っています
  • 発注者側に担当者がいない:社内でシステムを理解している人がいないため、提案をそのまま受け入れるしかありません

公正取引委員会が2022年2月に公表した官公庁の情報システム調達に関する実態調査では、保守・改修・更改の際に既存ベンダーと再び契約した理由(複数回答)として、「既存ベンダーしか既存システムの機能の詳細を把握することができなかったため」が48.3%で最も多く、「既存システムの機能(技術)に係る権利が既存ベンダーに帰属していたため」が24.3%でした。官公庁の調査ですが、民間企業でも同じ構造が見られます。

また、経済産業省の「DXレポート」(2018年)は、ITエンジニアの7割以上がベンダー企業に偏っており、ユーザー企業にノウハウが残りにくいと指摘しています。発注者側にシステムを理解する人がいないことも、ロックインの大きな原因です。

ベンダーロックインが問題になっているサイン

特定の会社と長く付き合うこと自体は、悪いことではありません。システムをよく知る会社に任せられるのは、むしろ利点です。問題になるのは、ほかに選択肢がないために、費用や品質を比べられなくなったときです。次のようなサインがあれば注意しましょう。

  • 見積もりが高い、根拠が説明されない:小さな改修でも高額で、内訳を聞いても工数の根拠が示されません
  • ほかの会社に相談すると断られる:中身が分からない、技術が特殊だという理由で、相見積もりすら取れません
  • 対応が遅い:問い合わせへの返事や、障害時の対応に時間がかかっても、ほかに頼む先がありません
  • 資料やソースコードを求めると渋られる:提出に追加費用を求められたり、契約上の理由で断られたりします
  • 提案が開発会社の都合に寄っている:自社製品への切り替えや、大規模な作り直しばかりを勧められます
  • 開発会社の担当者が変わると品質が落ちる:仕様が組織ではなく個人に依存しています

改修費が年々上がっている場合は、ロックインに加えて、システム自体が直しにくくなっている可能性もあります。費用の考え方は次の記事で解説しています。

ベンダーロックインから抜け出す手順

ロックインからの脱却は、いきなり開発会社を変えるのではなく、情報と権利を発注者側に取り戻すことから始めます。次の手順で進めるのが現実的です。

  1. 資産を棚卸しするシステムの一覧、使っている技術、サーバー・クラウド・ドメインの契約、アカウント、手元にある資料とソースコードを洗い出します
  2. 権利と契約を確認する契約書で、ソースコードや納品物の著作権の帰属、引き渡しの取り決め、契約の解約条件を確認します。判断が難しい場合は弁護士に相談します
  3. 資料を整備する今の開発会社に、設計書やソースコード、運用手順書の提出を依頼します。足りない部分は、現状調査で補います
  4. 移行の方法を決める新しい会社への引き継ぎで済むか、作り直しが必要かを判断します。作り直す場合は、一度に全部を替えず、機能やシステムごとに段階的に移す方法も検討します
  5. 並行期間を設けて引き継ぐ今の会社と新しい会社が並行して対応する期間を設け、障害対応や定期作業を引き継ぎます。アカウントは自社名義に切り替えます
今の開発会社との関係に配慮する引き継ぎには、今の開発会社の協力が欠かせません。資料の提出や並行期間の対応は、契約の範囲外として有償になることもあります。一方的に契約を打ち切るのではなく、引き継ぎの範囲と費用、期間を話し合って決めると、トラブルを防げます。

資料がほとんど残っていない場合は、手順3の現状調査に時間がかかります。仕様書がないシステムの調査の進め方は、次の記事で詳しく解説しています。

契約でベンダーロックインを防ぐ方法

これから開発や保守を依頼する場合は、契約の段階でロックインを防ぐことができます。特に次の4つの条項は、必ず確認しましょう。

ロックインを防ぐために確認したい契約条項

条項確認するポイント決めておきたい内容の例
著作権の帰属納品物(ソースコードを含む)の著作権が誰に帰属するか発注者に帰属させる、または開発会社に残る場合でも、発注者がほかの会社に改修させられる利用条件を定める
ソースコードの引き渡しソースコードが納品物に含まれるか、改修後も引き渡されるか初回の納品時と改修のたびに、最新のソースコードを引き渡す。自社管理の保管場所に置く
ドキュメント設計書・テーブル定義書・運用手順書などが納品物に含まれるか納品する資料の一覧を契約に添付し、改修時の更新も作業範囲に含める
アカウントの名義サーバー・クラウド・ドメイン・外部サービスの契約者と管理者契約者は発注者の名義にし、開発会社には作業用のアカウントを発行する
このほか、契約終了時の引き継ぎへの協力(期間・費用)を定めておくと安心です。

経済産業省が2007年に公表し、IPA(情報処理推進機構)が2020年12月に第二版として改訂した「情報システム・モデル取引・契約書」では、納入物の著作権について、ベンダーに帰属させる案を含む複数の選択肢が示されています。どの案を選ぶかは、開発会社が汎用的な部品を再利用したいかどうかなど、双方の事情によって変わります。大切なのは、権利がどちらにあっても、発注者がほかの会社に改修を頼める状態を契約で確保しておくことです。

契約の内容は、法律の専門的な判断を含みます。重要な契約は、弁護士など専門家に確認してください。

契約以外にできる予防策

  • 一般的な技術を選ぶ:多くの会社が扱える言語やデータベースを選ぶと、乗り換えやすくなります
  • 社内に窓口となる担当者を置く:システムの全体像と資料の保管場所を把握する人を決めます
  • 定期的に相見積もりを取る:大きな改修では、ほかの会社の見積もりも取り、費用感を確かめます
  • データを取り出せるようにしておく:データを一般的な形式で出力できるか確認し、定期的にバックアップを自社で保管します
保守契約の見直しに使えるチェックリスト
保守契約で確認すべき項目をまとめたチェックリストや、RFP(提案依頼書)のひな形を収録した無料テンプレート集を用意しています。今の契約の確認や、次の発注の準備にお使いください。
オーバーエックスの保守引き継ぎオーバーエックスでは、他社が開発したシステムの現状調査や保守の引き継ぎ、必要に応じたリプレイスに対応しています。引き継ぎの際は、ソースコードや資料、アカウントを発注者側で管理できる形に整えることを重視しています。詳しくはシステム保守・運用、システムリプレイスのページをご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。

よくある質問

ベンダーロックインは違法ですか?
特定の会社と継続して取引すること自体は違法ではありません。ただし、取引の条件や方法によっては独占禁止法などが問題になる場合もあります。個別の判断は弁護士など専門家に確認してください。
ソースコードの著作権が開発会社にある場合、乗り換えはできませんか?
できないとは限りません。契約で、発注者が改修できる利用条件が定められていることもあります。まず契約書を確認し、必要に応じて今の開発会社と権利の譲渡や利用条件について話し合います。判断に迷う場合は弁護士に相談してください。
今の開発会社に資料の提出を断られたらどうすればよいですか?
契約で納品物と定められているかを確認し、定められていれば提出を求められます。定めがない場合は、有償での作成や提出を相談します。それでも難しい場合は、画面やデータベースからの現状調査で仕様を復元する方法があります。
パッケージやクラウドサービスでもロックインは起きますか?
起きます。特定の製品やサービスに業務とデータが依存すると、乗り換えに大きな手間がかかります。導入前に、データを一般的な形式で取り出せるか、解約時のデータの扱いを確認しておきましょう。

まとめ

ベンダーロックインは、特定の開発会社以外ではシステムの保守や改修ができなくなった状態で、技術・契約・知識の3つの面から起きます。原因の中心は、システムの情報と権利が発注者側にないことです。抜け出すには、資産の棚卸し、権利の確認、資料の整備から始め、段階的に移行と保守の引き継ぎを進めます。これから契約する場合は、著作権、ソースコードの引き渡し、ドキュメント、アカウントの名義を決めておくことで、ロックインを防げます。

参考:公正取引委員会「官公庁における情報システム調達に関する実態調査について」(2022年2月8日)、デジタル庁「情報システムの調達」、経済産業省「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月7日)、IPA「情報システム・モデル取引・契約書(第二版)」(2020年12月22日)。

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TechBase 編集部(株式会社オーバーエックス)

東京・秋葉原のシステム開発会社。業務システム・Webシステム・基幹システムの受託開発、システムリプレイス、自社パッケージ開発、要件定義の支援を手がけています。オーバーエックスの特徴を見る

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