システム開発費の勘定科目と耐用年数|ソフトウェア資産の会計処理

「システム開発を発注したが、費用はどの勘定科目で処理すればよいのか」「一度に経費にできるのか、資産として何年かけて償却するのか」。システム開発費は金額が大きく、処理の仕方によって決算や納税額に影響するため、経理担当者や経営者にとって気になるポイントです。
この記事では、システム開発費の勘定科目と耐用年数の基本、取得価額に含める費用の範囲、開発中や改修時の処理、少額な場合の特例までを、2026年9月時点の国税庁などの情報をもとに発注者向けに整理します。
- 自社で使うシステムの開発費は、原則として無形固定資産「ソフトウエア」として資産計上し、減価償却する
- 税法上の耐用年数は、自社利用などは5年、複写して販売するための原本や研究開発用は3年
- 開発途中の支払いは「ソフトウエア仮勘定」で処理し、稼働(事業の用に供した)時点からソフトウエアに振り替えて償却を始める
- 稼働後の改修は、障害の除去や現状維持なら修繕費、機能追加や機能向上なら資本的支出。最終判断は顧問税理士に確認する
システム開発費の勘定科目とは
システム開発費の勘定科目とは、システムの開発・購入にかかった費用を帳簿に記録する際の分類です。自社の業務で使うために開発を依頼したシステムは、一般に長期間にわたって利用し、業務の効率化などの効果が続くため、支払った年に一括で費用にするのではなく、無形固定資産の「ソフトウエア」として資産に計上し、耐用年数にわたって減価償却するのが原則です。
一方で、SaaS(インターネット経由で利用するサービス)の月額利用料や、稼働後の保守費などは、資産ではなく支払った期の費用として処理するのが一般的です。
主な支出と勘定科目の例
| 支出の内容 | 勘定科目の例 | 処理 |
|---|---|---|
| 自社利用システムの開発費(稼働済み) | ソフトウエア | 資産計上し減価償却 |
| 開発途中の着手金・中間金 | ソフトウエア仮勘定 | 稼働時にソフトウエアへ振り替え |
| パッケージソフトの購入と導入設定 | ソフトウエア | 資産計上し減価償却 |
| SaaSの月額・年額利用料 | 支払手数料、通信費など | 期間に応じて費用処理 |
| 保守費・運用委託費 | 保守料、支払手数料など | 費用処理 |
| サーバーなどの機器 | 工具器具備品など | 有形固定資産として減価償却 |
ソフトウェアの耐用年数
税法上、ソフトウエアの耐用年数は用途によって定められています。国税庁のタックスアンサーでは、次のように整理されています(2026年9月時点)。
ソフトウエアの耐用年数(税法上)
| 用途 | 耐用年数 | 例 |
|---|---|---|
| 複写して販売するための原本 | 3年 | パッケージ製品として販売するソフトの原本 |
| 研究開発用のもの | 3年 | 研究開発のために使うソフトウエア |
| その他のもの | 5年 | 自社の業務システム、社内で使うWebシステムなど |
発注者が自社の業務のために開発を依頼したシステムは、多くの場合「その他のもの」に該当し、耐用年数は5年です。たとえば600万円で開発したシステムを期首に稼働させた場合、年間120万円ずつ5年間で償却するイメージになります(期中に稼働した場合は月割りで計算します)。
なお、企業会計上も、自社利用のソフトウェアは原則として5年以内の期間で償却するのが一般的です。会計上の処理は会社の会計方針によるため、監査を受けている会社は監査法人とも確認しましょう。
取得価額に含める費用・含めなくてよい費用
ソフトウエアの取得価額(資産として計上する金額)には、開発会社への支払いだけでなく、事業に使えるようにするための費用も含まれます。国税庁の情報では、購入した場合は購入代価に購入に要した費用と事業の用に供するために直接要した費用を加えた額、自社で製作した場合は製作に要した原材料費・労務費・経費に事業の用に供するために直接要した費用を加えた額とされています。
取得価額に含める主な費用
- 開発会社に支払う開発費(設計・プログラミング・テスト)
- パッケージソフトの購入代金
- 導入時の設定作業や、自社仕様に合わせた修正の費用
取得価額に含めないことができる費用
- 製作計画の変更などで不要になったことが明らかな費用
- 研究開発費(自社利用の場合は、将来の収益獲得や費用削減にならないことが明らかなものに限る)
- 製作のための間接費・付随費用で少額なもの(製作原価のおおむね3%以内)
データ移行や操作研修の費用などは、内容によって扱いが分かれることがあります。見積書の段階で工程ごとの金額を分けてもらっておくと、経理処理の判断がしやすくなります。
関連記事システム開発費用の内訳とは?人月単価・工程別の配分をわかりやすく解説
開発中から稼働までの処理の流れ
- 契約・着手金の支払い開発途中の支払いは「ソフトウエア仮勘定」に計上する(まだ償却はしない)
- 中間金の支払い同じくソフトウエア仮勘定に積み上げる
- 検収・残金の支払い最終的な取得価額を確定させる
- 稼働(事業の用に供した日)仮勘定からソフトウエアへ振り替え、この月から減価償却を開始する
減価償却は「検収した日」ではなく「実際に業務で使い始めた日」から始まるのが原則です。年度をまたいで開発する場合は、期末時点で仮勘定に残っている金額を確認しておきましょう。
稼働後の改修費の扱い
稼働後にプログラムを修正した場合の費用は、その内容によって処理が変わります。法人税基本通達7-8-6の2では、次のように整理されています。
改修費の区分
| 改修の内容 | 区分 | 処理 |
|---|---|---|
| プログラムの機能上の障害の除去(不具合の修正) | 修繕費 | 支出した期の費用 |
| 現状の効用の維持(環境変化への対応など) | 修繕費 | 支出した期の費用 |
| 新たな機能の追加、機能の向上 | 資本的支出 | 資産に計上し減価償却 |
保守契約の中で行う不具合修正は修繕費、新しい帳票や画面を追加する改修は資本的支出、というのが典型的な考え方です。改修を依頼する際は、見積書や作業報告書に「不具合修正」「機能追加」を区別して記載してもらうと、経理処理がしやすくなります。
関連記事システム保守費用の相場は開発費の何%?内訳と契約形態
少額な場合の特例
ソフトウエアの取得価額が少額な場合は、一度に費用にできる、または短い期間で償却できる制度があります。
- 10万円未満:少額の減価償却資産として、事業に使った年度に全額を損金にできる
- 20万円未満:一括償却資産として、3年間で均等に償却できる
- 中小企業者等の特例:青色申告をしている中小企業者等は、一定の要件のもとで取得価額が一定額未満の資産を一括で損金にできる(年間の合計300万円まで)
中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年度(2026年度)税制改正で、2026年4月1日以後に取得等した資産について対象が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が2029年3月31日まで延長されたと公表されています。あわせて、対象となる法人の従業員数の要件が見直されています(2026年9月時点)。適用の可否や要件は、必ず顧問税理士に確認してください。
よくある質問
- システム開発費を全額その年の経費にすることはできますか?
- 自社で使うシステムの開発費は、原則として無形固定資産のソフトウエアとして資産計上し、耐用年数5年で償却します。ただし、取得価額が少額な場合は、少額減価償却資産や一括償却資産、中小企業者等の特例により、一度に、または短期間で費用にできることがあります。
- SaaSの利用料も資産計上が必要ですか?
- SaaSの月額や年額の利用料は、ソフトウエアを取得するものではないため、一般に利用期間に応じて費用として処理します。ただし、初期設定費用などの扱いは内容によって異なるため、顧問税理士に確認しましょう。
- 要件定義の費用もソフトウエアの取得価額に含まれますか?
- 開発するシステムのための要件定義であれば、取得価額に含めて処理するケースが一般的です。ただし、構想段階の調査や、開発に至らなかった検討の費用などは扱いが異なることもあるため、工程ごとの金額を分けて記録し、税理士の判断を仰ぎましょう。
まとめ
自社で使うシステムの開発費は、無形固定資産のソフトウエアとして資産計上し、税法上は耐用年数5年で定額法により償却するのが基本です。開発中の支払いはソフトウエア仮勘定で処理し、稼働した時点から償却を始めます。稼働後の改修は、不具合修正などは修繕費、機能追加は資本的支出として扱います。見積書や請求書で工程・内容ごとに金額を分けてもらうと、正しい処理がしやすくなります。個別の判断は、必ず顧問税理士に確認してください。
参考:国税庁 タックスアンサー No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数/国税庁 法人税基本通達 第8節 資本的支出と修繕費/財務省 令和8年度税制改正の大綱/経済産業省 少額減価償却資産の特例の拡充
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